折句 おりく [歌学用語] 短歌の各句の頭に五文字の語(句)を置いた歌、またはその技法。広義には沓冠も含む。古い例に「かきつばた」を詠み込んだ「から衣きつつなれにしつましあれば はるばるきぬるたびをしぞ思ふ」(古今・四一〇)がある。折句は詠歌の前提がわからないと、詠み込まれた語句には気づきようがない。そのため、東下りの途上で杜若を契機に、業平が友人に「旅の心」を披瀝した掲歌や『亭子院女郎花合』の後宴の歌などがよく示すように、作者と共通理解をもつ集団や、特定の相手に効果を発揮する技法であった。折句という呼称は『新撰和歌髄脳』や『奥義妙』にあるものが早いものだろう。(全文)
『和歌文学大辞典』 (株)古典ライブラリー 平成二十六年十二月
あ行 岩清水うつし揺れたる枝咲きの 雄花を染める朝焼けの空
か行 消え去りぬ今日(けふ)惜しむらし雁の鳴に 心染めぬる紅の空
さ行 菫咲く清水の川のせせらぎは 去りぬる春のそそぐ風なり
た行 寺の音千入の空を佇みて 時の過ぎるをついぞ忘れむ
な行 西日さす音(ね)なき山野を眺めつつ 主なき宿に野花咲くなり
は行 冷え果てぬ細き枝より隔て見ゆ はるかに冴ゆる冬空の月
ま行 もし死なば巡り会わむと待つ空の 昔の人も見まきける月
や行 山辺の井水湧き出で澱む葉の 江に沈みゆる雪どけの朝
ら行 来春に路氷も消えて黎明の 流水となる瑠璃の湖