自由詩 vers libre。フランス詩において自由詩と呼ばれる場合には、二つの異なった場合がある。17世紀に自由詩と呼ばれたものは、音綴(おんてつ)数が12の同一音綴数に限定されておらず、また詩節strophesがないか限定されていないものを指した。しかし脚韻は存し、また音綴数などに関しても各詩句としては定型詩句vers regulierとしての態をとどめていた。これに対して近代の自由詩とは、従来の詩句において音綴数と関係のある(中略)緒規則を無視する。かくて詩句を詩句たらしめるものはもっぱら詩人の内面の律動であり、イマージュそのものの流動性である。(中略)この自由詩の試みから、後にダダイズムやシュールレアリスム以後の詩人たちのさまざまな詩形の試みが発展するのであり、その意味で現代詩の理解のためには自由詩の生成発達の過程を知ることは重要である。
「フランス文学辞典」 (株)白水社 1974年9月