相聞 さうもん [飛鳥時代以前・奈良時代万葉集用語]分類項目。雑歌・挽歌と並ぶ三大部立名の一つ。巻によっては「相聞歌」と「歌」をつけて用いられる。相聞(或いは相問)の語はもともと『文選』をはじめ内外の諸文献にも見え、一般語彙として、贈答、音信あるいは安否を問う、消息を通じるなどの意を表すが、『万葉集』の部立としては、漢詩における「贈答」に代わり、親しい者と情を通じあう歌を収めるが、これには男女間のものを中心に親子・兄弟・朋友なども含む。原義からすればすべて贈答歌であるべきだが、実際には独詠歌や伝承歌なども多く含まれる。相聞歌の源流はおそらく歌垣などの集団歌謡にまでさかのぼるだろうが、万葉時代には種々の表現様式も分化し抒情詩としての完成を見せている。私的な内容を盛るだけに短歌形式の作が多いが、柿本人麻呂には長歌体の名作「石見相聞歌」(巻二)もある。全巻相聞は巻四及び一一、一二の三巻だが、これ以外にも四季分類と雑歌・相聞を組み合わせた巻八、一〇の他、先行歌集作品を集めた巻九、長歌を集成した巻一三、東国関係歌のうちに多くの相聞歌を収めた巻一四など、相聞の部立を有する巻は多い。このうち巻四の収録歌の範囲は四期全体に及ぶが、とりわけ第四期、家持及びその周辺の天平貴族の恋の雅びが体現されている。これに対して、巻一一、一二は目録に「古今相聞往来歌類」上・下とあり、正述心緒、寄物陳思、譬喩などの下位分類を設けて、相聞歌のさまざまな表現様式を提示する。また巻一二では旅にかかわる「羈旅発思」「離別」といった下位項目を設けて新たな展開も見せてもいる。勅撰集等の後代歌集部立では「恋」が用いられ、相聞の語は姿を消す。(全文)
『和歌文学大辞典』 (株)古典ライブラリー 平成二十六年十二月
望むなら もし君の
あなたのもとに 言葉が詩に
戻るのに 聞こえたら
ふたりの月が ふたりの月が
充ちてゆくから 充ちてきたとき
ひと絶えて 果てしない
ふたり眺める 時空の旅に
あの海に 太陽と
沈む夕日が 海が溶け合う
ただ愛しくて 永遠を視る
待ちわびて 待ちわびて
彩る春の 息吹く春の
花びらに 花びらに
あなたの愛が 愛しい君の
今染まりつつ 香り湧きつつ
月影を 月影に
さへぎる花の うつむく花も
かたすみに ひとひらと
寄り添ふふたり 羞じらふ頰に
夢のひと夜と 染まりゆく君
《かぐや姫》 《詠み人知らず》
今はとて 今はこの
天の羽衣 世に果なむと
きるおりぞ 知る空の
君をあわれと 月夜の君ぞ
思ひいでける 思ひいでける